2008年04月27日

 Giving Away My Secrets To ... #11

 日々が過ぎ、インドア・トラックのシーズンは終盤に差し掛かっていた。

 同じ学年のKennyとPaulとMasa、1つ年上のMark、この4人は2マイル・リレーの
選手だった。Masa以外の3人は前シーズンにクロスカントリーをこなしていたせいか、
調子があがっていた。Masaは運動神経万能で4人の中でMarkの次に速い。Markは
個人でクロスカントリーやインドアでも地区大会に入賞する優秀な選手だった。

 ある週末、恒例のMeet(=大会)があった。いつものMeetよりバスに揺られる時間が
長く、会場もかなり大きいインドアホールに着いた。雰囲気が違うので、Masaに言った。 
 
 「ここ大きいね〜」
 「・・・やっぱりわかっていないような・・・地区大会だよ、今日。勝てば州大会にいける」
 
苦笑しながら説明してくれた。私が「え?そうなの???」と答えるのを見て、他の子たち
に「うわ、ゆき、今知ったみたいだぞ」と言って笑わしていた。

 「しっかり応援しろよー。勝ったら『州』大会だぞー。ラップタイム、取らなくていいから」

 KennyとPaulがリレーが始まる直前、ライン際に立つ私に話しかけてきた。

 「あ、私は応援しながらラップタイムをとる『優秀な』マネージャーですから」

 強調して言い返したけれど、「地区大会だって知らなかったくせに」と頭をつつかれた。

 Kennyがスタートで、次にPaulが、3番目にMasa、アンカーはMarkだった。
 Kennyは3位にほぼ並ぶ4位でPaulに繋いだ。Paulは3位の走者を抜いて、Masaに
バトンを渡し、Masaは1位の走者に近付いていた。最後にバトンを託されたMarkはすぐ
にトップを抜き、1位でゴールした。スローモーションのように4人が抱き合うのが見えた。
 私はめちゃくちゃに叫んで(日本語だった・・・)応援しながらも、右手はしっかりストップ
ウォッチのボタンを押して記録をとっていた。ラップタイムを計算すると「んー最高!!」と
思わず叫んでいた、4人とも今までで一番の記録を出している。4人はみんなに祝福され
ながら表彰式に参加していた。

 帰りのバスの中、ラップタイムを先生が読み上げると背後に座っていたKennyが私の
頭をなでた。「優秀なマネージャーです」と笑って、先生に向かって叫んだ。

 「州大会、ゆきも連れて行ける?」
 「僕からもお願いしまーす。今度はちゃんと『州』大会ってわかってると思うし」

 Masaも席から叫んでいた。みんながどっと笑い、先生は「連れて行くつもりだったよ」と
言ってくれた。先生は留学生の私が1度きりしかこのシーズンを過ごせないことを知って
いるから、同行させてくれるつもりでいたのだと思う。彼らが先生に訊ねたのは、州大会は
出場資格のある選手だけが行くことになっているからだった。


 その10日後くらいだった。州大会は平日で、2時限目の授業途中から学校を抜けた。
 州大会へ向かったのは2マイル・リレーの4人(Markは個人で中距離走も)と長距離走
で入賞したKevin、先生と私の7人だった。今までインドアのメンバーみんなで乗っていた
大型スクールバスとは違う、小さなスクールバスだった。

 会場は地区大会よりもさらに大きくて、アメリカって何でこんなに大きいんだろうって感心
するばかりだった。インドアホールにトラックがあり、その中にフィールド種目ができる場所
があって・・・ただただ規模が違う。私って小さいのね、って妙に納得して苦笑してしまった。

 さすがに州大会になると、4人のリレー・Markの中距離・Kevinの長距離も予選で敗退
した。けれど・・・行き帰りの長い時間の移動の中、Masaと私でKennyやPaulに日本の
ことを話したり、待ち時間に6人で小さなゴムボールを使ってサッカーをしたり、それぞれの
種目でみんなの応援をしたり・・・ちょっとしたことばかりだけれど、大会そのものより鮮明な
記憶として残っている。あのとき一緒にいた5人は特別な友達だった。Masaは当然だけど、
他の4人とは1年間を通じて同じ部活動を選んでいて、共にいる時間が長かった。放課後に
顔を合わせるのが普通になっていて、誰かが欠けるとすぐにわかる。
 
 州大会の終わりは、インドア・トラックのシーズンの終わりでもあり、めぐりくる季節は春。

 Masaとの別れも近づいていた。
posted by yuki at 00:00| Memoirs | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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